Vol.53 信託
たぶん、「信託」=「信託銀行」とイメージする人が多いのでしょうね。
東京大学の樋口教授は、「信託」とは「信じて託すること」と解説されています。
すごくシンプルで分かりやすい解説ですよね。
この樋口教授の「入門 信託と信託法」という本は、是非読んでいただければと思っています。
その内容を参照しつつ、信託について少しだけ。
信託では、信託をする者を委託者、引き受ける者を受託者、利益を受ける者を受益者といいますが(信託法2④,⑤,⑥)、委託者と受託者が必ずしも対等であるとは考えていません。
そう考えると、私たちは日々「信託」をしていることに気付きます。
例えば、「弁護士」と「依頼者」、「医者」と「患者」のような関係が、「信託」に当たるといえます。
当事者の一方(依頼者や患者)が、法律行為(事件の解決や診察)をすることを相手方(弁護士や医者)に委託し、相手方(弁護士や医者)が、これを承諾する(引受ける)ことで効力が生じます。
これらは、日本では「委任契約」や「準委任契約」と考えられていますが(民法643)、当事者間では専門知識に圧倒的な差が存在します。
本来、契約なら、当事者が「各々」自己の利益の追求を考え、責任や義務の限定を考えます。
でも、「依頼者」や「患者」は、「弁護士」や「医者」を「信じて頼らざるをえない」という心境にありますよね。これって、対等な契約関係を築けていません。
法律的に、信託ではないとしても、本質的には、信じて託すという関係、まさに信託だと思いませんか?
こんなようなことを、信託法に基づいて、「信託」として実行すれば、契約よりも使い勝手は良い場面は多く存在すると思います。
さらに、遺言よりも信託の方が優れている点もああります。
ご紹介した本を読めば、信託の奥深さや面白さが分かりますし、イギリスやアメリカで信託が広く使われているのに、日本では未だに信託が浸透していない謎も「スッキリ」理解できますよ~(^^)
ただ、複雑な信託については、税制が整備できていないところがあるので、利用できない場面もありますが・・・。
まさに「タックスドリブン(tax driven)」(→Vol.46参照)です。
ちなみに、以前、ご紹介した、次の本にも、信託の解説があります。
「信託ってなに?」と思ったら、手に取ってみてください(^^)
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