Vol.59 プライスレス
人の気持ちは、お金では買えませんね。いや、買えるいう人もいるようですが(苦笑
相続の現場では、お金で解決ということが、起こり得ます。
ただ、こうなるのは、気持ちにわだかまりがあるためかなと思います。
もっと遺産を貰いたい、あるいは、貰えるはずだ、貰ってもおかしくない、という気持ちが解消される場合もあれば、解消されない場合もあり。
よく、残された相続人間のトラブルを回避するために、遺言書を作りましょうという類のアナウンスがされます。
でも、良かれと思って作成した遺言書が、逆に、トラブルの引き金になってしまうこともあります。
よくあるのが、一部の相続人に偏った財産分けを記しているケース。
相続人が子供二人のときに、一方の相続財産が90%で、もう一方が10%なんて具合。
こういったケースでは、民法上、「法定相続分の半分」について、最低相続できる権利として「遺留分」というものが認められています。このケースでいえば、法定相続分2分の1の半分、「25%」となります。
すると、10%しかもらわなかった側は、「遺留分減殺請求」といって、「あと15%よこせ」なんて請求をできるわけです。
他に、私が経験したケースで、次のようなケースがあります。
将来の相続でもめないようにと、家族全員で話し合いをして、公正証書遺言を作成されたかたがいます。
その段階では、みなさん満足されていたのでしょうね。
そこまでは良かったのでしょうが、そのあとで、公正証書遺言が作り直されたというケースです。
まずいのは、当初の公正証書遺言は、家族全員で話し合って作ったのに、一部のかただけで作り直されたという点。
変更を知らされていたなかった家族からすれば、そりゃ気分を害しますよね。
こうなったら、お金の問題以上に、気持ちの問題になります。
これらが明るみになって、再度、家族全員で話し合いの場を持ち、公正証書遺言を作り直され、一見すると、仲も回復したようにも見えるのですが、本音のところではどうでしょうね・・・。
今回、遺言内容で不利な立場に立たされかけたかたからすれば「また目を盗んで作り変えるんじゃないか」と疑っても不思議ではないように思います。
お金で解決できても、それは、うわべだけ。気持ちの解決は、やはりプライスレスです。
公正証書遺言は、相続のトラブル回避として利用できるツールです。ただ、一歩間違えれば、一方では非常に役立つが、他方では大きな損害をもたらす危険もある「諸刃の剣」と化す可能性をもっていると理解しておく必要がありますね。