Vol.78 間違いではないけれど・・・
年末調整。
企業にお勤めだと、毎年の手続ですが。
その手引きが、税務署から企業へ届けられています。
で、今年について言えば、この手引きだけ読んでいては、誤ってしまうケースもありそうです・・・。
というのは、今年の10月17日付で、
「通勤手当の非課税限度額」が引上げられまして、
これが「4月1日以後に受けるべき通勤手当から適用する」とされたからです。
で、この改正の対象になるのは、「自動車などの交通用具」を使って通勤している人に限られます。
詳しくご覧になりたい方は、国税庁のHPをご覧くださいね。
そもそも、通勤手当は、通勤するのに必要な「旅費の実費精算」と考えられています。
実費精算ですから、そこに「儲け(=所得)」は生じないと考えられ、所得税は非課税とされているんです。
この10月にその非課税の枠が増え、それが4月に遡って適用されます。
仮に、4月から9月に非課税限度額を超えた通勤手当の支払いを受けていた場合には、
その超えた分には所得税が課税されているわけです。ま、企業側がきちんと給与計算をしているという条件付ですが(^^;
たとえば、通勤手当の非課税限度額が24,500円のところ、30,000円貰っていれば、限度を超えた5,500円に所得税が課税されているってことです。
でも、この非課税限度額が、この度の改正で24,500円から31,600円に増えると、5,500円部分には所得税は掛からなかった・・・となります。
でも、既に9月分までは給与の支払いは終わっていて、所得税は課税されてしまっている・・・じゃあ、どうするのか。
答えは、「年末調整で精算しましょう」となるんですが・・・。
ここの説明が、企業に届いている「年末調整のしかた」という手引きには、一切載っていないんです・・・。
・・・なぜか。その理由は、この手引きを1ページめくってみると分かります。
そこには「平成26年9月1日現在の所得税法等関係法令の規定に基づいて作成していあります」と書かれてあります。
そう、この非課税限度額の改正が行われたのは10月です・・・。
10月末には企業へ発送しているようなので、印刷直しはできなかったのかな?
手引きに誤りはないといえば、それまでなんですが、「ん~、・・・」と思うわけです。
改正の内容のペラ1枚くらい同封しても・・・と思ってしまうのは、当局には酷なんでしょうかねぇ・・・。
蛇足ですが、この改正は、8月の人事院勧告で、国家公務員の通勤手当が引上げられたのに合わせたものだということ。
Vol.77 教訓
いつの世も、脱税のニュースは消えませんね。
昨日の日経です。
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医療法人「徳洲会」の徳田虎雄元理事長(76)が、グループの病院建設をめぐり2006年にゼネコン側から受け取ったリベート約1億円を税務申告していなかったことが18日、分かった。元理事長が自主的に修正申告し、熊本国税局は所得隠しと判断したもようだ。
元理事長は延滞税を含め、所得税約3千数百万円を課税された。税務調査前に修正申告したため、重加算税は課されなかったとみられる。
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もし、税務調査があって、申告漏れが発覚していたら。
本来納めないといけない税額や延滞税とは別個に、35%の重加算税が課税されていました。
今回の件は、2012年の衆院選での公職選挙法違反事件で関係先が東京地検の捜索を受けた後の申告だということ。
「こりゃ、ばれるかも」と焦って申告したのでしょうかねぇ。
もし、選挙違反容疑がなく、東京地検が動いていなかったら、まだ隠していたのでしょうか。
最初隠したのは10万円で、これがばれなかった。味を占め、隠す金額が50万円になり、100万円になり・・・気が付けば数億円。
まるで、借金に慣れていく人のよう、そんな感じだったのでしょうか。いや、庶民の発想ですから、最初から数百万円、数千万円だったのかもしれませんが。
教訓、何事においても、怖いのは、慣れからくる油断ですね。
いや、所得隠しを進める訳ではないのですが・・・(^^;
家庭、仕事、・・・日々心新たにありたいですね。
Vol.76 先人の教え
衆議院解散、総選挙。
安倍首相の判断は予定通りだったのでしょうか・・・。
野党は「アベノミクス失敗」を盾にして選挙戦に挑むのでしょうね。
この一件に関しては、結果的に、失敗政策だったと言わざるを得ないのでしょうね。
現代ビジネスの記事では、
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菅義偉官房長官は同日午前、東京・内幸町の帝国ホテルで開催された日米財界人会議での基調講演で「安倍政権はデフレからの脱却と財政再建という二兎を追って二兎を得る政権だ」と語った。
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ということですが、GDPの6割を占める個人消費(消費者庁)が低迷したままでは、二兎なんて得られるわけもなく。
ん~、
「円安誘導で輸出企業の利益アップ」→「給与アップ」「税収増加」→「国内消費増加」「税収増加」→「企業利益増加」「税収増加」→「給与アップ」「税収増加」・・・「デフレ脱却」「財政再建」
というスパイラルではなく、
「円安誘導で輸入価格アップ」→「物価上昇」→「国内消費の冷え込み」→「景気停滞(後退?)」→「日本(円)売り」→「円安加速」→「輸入価格アップ」・・・「消費増加を伴わない悪いインフレ」「財政悪化」
というスパイラルに入っているということなんでしょうかね。
やはり、「二兎を追う者は一兎をも得ず」を覆すには、至らなかったと。
・・・先人の教えは、深いですね(^^;
この結果を受けて、根本的な政策の見直しが必要と学んだと思うのですが、さて、どうなりますか。
ドイツの哲学者ヘーゲルは
「人間が歴史を学んで分かることは、人間は歴史から何も学ばないということだけだ」と言ったそうですが・・・。
Vol.75 60歳デビュー
ついに、男性の平均寿命も80歳を超えたのですね。
ちょっと古いですが、7月の朝日デジタルの記事です。
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日本人男性の平均寿命が初めて80歳を超えた。2013年の平均寿命が前年を0・27歳上回り、80・21歳となった。女性は前年より0・2歳上がって過去最高の86・61歳となり、2年連続の世界一だった。厚生労働省が31日に発表した「簡易生命表」で分かった。
男性の平均寿命は前年の世界5位から4位に順位を上げた。世界一は香港の80・87歳だった。
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凄いですね。
で、長寿国家ゆえに、経営者の代替わりも、高齢化しているのだと思います。
親族で経営している会社なんかだと、次期社長は息子さんということが沢山あります。
社長が80歳で現役社長、そろそろ事業承継を・・・というケースだと、息子さんも既に50歳~60歳なんてことも。
みなさんが、この息子さんの立場だと、どう思われますかねぇ。
たとえば、60歳にして社長に就くとしたら・・・上場企業などではなく、親族の会社でです。
『まだ60歳なんだし、これから社長として第一線でバリバリ頑張るぞー!』と思う方は何人いるでしょうね?
これが、
『まだ40歳なんだし、これから社長として第一線でバリバリ頑張るぞー!』なら、理解できますが。
職種にもよるでしょうが、親族の会社について事業承継を考えるのなら、継ぐ側のことも考えないとねぇ・・・。
80歳を過ぎて現役社長を『凄い』と思うか、『それってどうなの』と思うか、みなさんはどちら?
Vol.74 チェック機能
自分でやったことって、他人がチェックしないと間違いを見つけにくいと思います。
一旦完成品として作り上げると、どうしても、「これで正しい」という目線が拭いきれないからだと思います。
だから、他人の目が入ることが必要。些細な間違いでも、発覚することがあるのではないでしょうか。
国や各省庁などの会計も、内部のチェックだけでは見つけられないこと、あるいは、見つけても問題としていないことなどもある。
そのチェック機能を果たすのが「会計検査院」と呼ばれる期間です。国会及び裁判所に属さず、内閣からも独立した憲法上の機関なんです。
13日付の日経の記事です。
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会計検査院が国の2013年度決算の検査報告をまとめた。税金の使い方などに問題があると指摘したのは約600件で、金額は2800億円を超えた。
来年10月に予定されている10%への消費増税を延期するかどうかにかかわらず、国民の税金を使う行政の無駄を省く努力はひとときたりとも怠ってはならない。政府はこの報告を真剣に受け止め、不適切な支出がないかどうかを徹底的に精査すべきだ。
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金額が大きくて、ピンとこないかもしれませんが、法人税率を1%引き下げると、約5000億円の財源が必要とされますから、仮に、毎年これくらいの無駄使いがあるとすれば、税金の無駄使いをゼロに近づけることができたら、法人税率0.5%引下げ分の財源が確保されたも同じですよね。
さて、報告を受けて、無駄使いを減らすことができるのか・・・
会計検査院の報告をご覧になりたいかたは、こちらです。
皆さんは、無駄使いの改善って出来ますか(苦笑
Vol.73 本当にいいの?
どうやら、消費税の増税時期を、2017年4月まで見合わせることになりそうですね。
昨日の日経の記事です。
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政府は2015年10月に予定する消費税率10%への引き上げを延期する方向で最終調整する。今年4月の8%への引き上げに伴う影響で景気がもたつく中、再増税による経済情勢の悪化を懸念したもので、安倍晋三首相が来週に決断する。引き上げ時期は1年半後の17年4月が有力で、食料品などにかかる税率を低く抑える軽減税率を同時導入する案も浮上している。
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日銀の黒田総裁は、予定通りに消費税率が10%に引上げられることを前提に、バズーカを放ったのに・・・と、政府に対して不信感を持たれているようですが。
消費が伸び悩んでいる現状では、とても消費税率を上げることはできないのでしょうね。
気になるのは、「食料品などにかかる税率を低く抑える軽減税率を同時導入する案も浮上」という件。
もともと、すべてについて消費税率を10%にすることで社会保障費を賄おうとしていたわけですから、一部の品目などについて5%や3%などとすれば、当然財源が足りなくなります。
すると、軽減税率以外の品目について、消費税率を10%以上にする必要が出てくるわけです。
それに、軽減税率の対象とするかどうかを、どこで線引きするか。
軽減税率の対象になったものと似ているものを取り扱う業界から、「うちのも軽減税率にすべきだ~」なんて声があがったり、場合によっては政治的な圧力がかかったりしないか。
それ以外にも、たとえば、食料品を軽減税率にするとしても、トウモロコシを食料とすることもあれば、飼料とすることもあるかもしれません。
お店で買ったものをテイクアウトするなら、食料品に該当するけど、店内で食べるのはサービスも含まれるから対象外とするのか。持ち帰りとして購入して、店内で食べた場合はどうなるのか・・・などなど。
ヨーロッパでは、軽減税率導入を反省している発言が多数ありますし・・・。
さて、本当に軽減税率を導入するのでしょうかねぇ。
Vol.72 あと3日
11月11日~17日までの1週間は、「税を考える週間」
最近は、消費税の増税や法人税率の軽減の話題があふれていて、この手の話は耳にする機会も増えているかもしれまえんね。
でも、税そのものの性格なんかについて、普段から意識されている方って少ないでしょうね。
関係各所で色々な案内や催しなどが開催されているようですので、ちょっと訪れて見られるのも良いかも。
国税庁HPのトップページでも上の方に「税の役割と税務署の仕事」と題したバナーが設けられていて、こちらをクリックすると、
動画も見られるようにするなど、税のことを、分かりやすく解説しています。
人気の動画なんてのもあり、興味深く税のことを学べると思いますよ♪
よろしければ、こちらをご覧くださいね。
大阪にお住いのかたなら、今週末16日(日)に、あべのハルカスで、「税理士による税の無料相談」が開催されます。
「縁活」という市民活動団体の取り組みの一つとして開催されるようです。
無料相談会の詳細をご覧になりたいかたは、こちらをご覧くださいね。
税について、あまり良いイメージを持たれていないかたも多いかもしれませんが、私たちの生活とは切っても切り離せない存在です。
今の税の仕組みを知るのことも大切ですが、ちょっとタイムスリップして、昔の税を訪ねてみるのも面白いかもしれませんよ~。
歴史は税とともに歩んできたといっても過言ではないかもしれません。税の歴史にご興味があれば、こちらへどうぞ(^^)
Vol.71 真実は一つ
贈与税の時効は6年とされています(相続税法36条)。
でも、贈与の事実が無ければ、当然時効も成立しませんね。
おまけに、被相続人が生前にした子や孫への贈与が、なかったものとなれば、
その財産はずっと被相続人が所有していたことになりますから、相続税の対象になります。
今週の週間税務通信の記事です。
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贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託をすることによって、その効力を生ずる。」とされている(民法549)。両者の意思であれば口頭でも贈与は成立するが、調査等で贈与の事実が証明できるのかが問題だ。
贈与税の申告納付をしておけば、贈与の事実が税務署に認定されたものとして、今後の調査でも問題視されないだろうと捉える向きもあるようだが、贈与税の申告納付はひとつの判断材料に過ぎない。
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形式だけ整えていてもダメよ~ってことです。
真実は一つで、それは、当人同士がよ~く分かっているはず。
上手くウソをついたとしても、どこかで綻びが出るのがオチ。ウソがばれないようにドキドキするより、事実に即した申告をしましょうね(^_ ‐)v
Vol.70 一つのモノを作る難しさ・・・
2日遅れの情報ですが。
国税庁HPに、来年以降の「相続税のあらまし」が掲載されました!
さらに、「申告要否の簡易判定シート」も掲載されました!
Vol.59で触れましたが、来年から相続税の基礎控除が40%引き下げられることで、相続税の申告者数が大幅に増えると予想されることへの対応なんですね。
今年もまだ2か月を残していますが、はやめの対応で、「広く一般に周知しとかなきゃ」ってところなんでしょうかね。
さっそく、内容を斜め読みしました。で、「相続税のあらまし」を読んだ感想は・・・「ん~、このあらまし要るかなぁ」というのが率直なところです。
結局、冒頭の「相続税に関する詳細な情報等を確認したい場合は、国税庁ホームページの「相続税・贈与税・事業承継税制関連情報」(ホーム>税について調べる>パンフレット・手引き)をご利用ください。」ということで収めている感じですね。
また、「申告要否の簡易判定シート」のほうは・・・「これ大丈夫かなぁ」というところですかね。
これで「相続税の申告は要らないなぁ」と判断してしまうには危険のように思います。
これなら、「来年から相続税の基礎控除が引き下げられます。詳しくはこちら。」と、デカデカと目立つように書いておくくらいで良いようにも思えたりして・・・。
と、作成者側の労力を全く無視して、好き勝手なこと書いていますが・・・(^^;
さて、バージョンアップはいつされるのかなぁ・・・?
Vol.69 いつの分か
サラリーマンのかたは、そろそろ年末調整の時期が近付いてきて、生命保険や地震保険、国民年金などの「控除証明書」を集めているころかな、なんて想像します。
ガサゴソ書類探しをしていて、見つけたと思ったら、それって去年のものだった(涙) じゃあ、今年のは???
仕事が出来るかどうかは、整理整頓ができるかで大きな差がつくようにも思いますし(←自戒を込めて・・・(汗) )
整理整頓ができないと、仕事の難易度が格段にアップします。新旧が混在し、どの書類が生きているものかを探すのにひと苦労します。
最近の税制が、これによく似ていると思います。法案は成立しても、施行されるのが数年後・・・なんてのがザラにあるからです。
たとえば、相続税の増税と銘打たれた改正は、来年から施行されますが、法案が成立したのは「平成25年3月」です。
では、なぜ平成27年1月以降に発生した相続から適用するとしたか。
1月に亡くなられた人の相続税の申告期限は10か月後の平成27年10月以降です。
「平成27年10月」・・・。そう、来年10月といえば、消費税の10%引き上げ予定時期と同じタイミングですね。
もともとは、平成24年の3月に成立した、通称「社会保障・税一体改革」に基づいて、消費税や相続税、所得税が一体的に見直されたものです。
つまり、一般庶民から消費税の増税の理解を得ようと、富裕層には更なる負担を求めたとの理解ができるんですね。
とはいっても消費税の増税には時間がかかる。そんなわけで、相続税の改正も、実質的に決まってから施行されるまで、なんと3年もの時間を費やしたんですね(^^;
これとは別に、この間も数々の税制改正が誕生していますから、どの改正がいつから適用されるかの整理も、難しくなってるんですね。
仮にこれを、日々の仕事の書類整理に置き換えれば、・・・かなり高いレベルで整理整頓、期日管理が出来ていないと、とんでもないことになると思うわけです。
今やるべきことは、今のうちに整理整頓しておかないといけませんね(←やっぱり、自戒を込めて(汗) )