Vol.9 教育資金「一括」贈与
導入以来、これほどまでに好評を博した制度も珍しいと思われるのが、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」と思います。
祖父母などが、子どもや孫名義の金融機関の口座などに、一定の教育資金を一括して拠出した場合、子どもや孫ごとに1500万円までは贈与税を非課税とする特例で、平成27年12月末まで適用されます。
ただし、将来に贈与税が課税されることもあります。
たとえば子どもや孫が30歳になっても使い切れずに残った場合や、一定の教育費以外に使用した場合などには、子どもや孫が30歳になった年に、それらの部分について贈与税が課税されることになります。
もともと、扶養義務者間で、生活費や教育費に充てるためにした贈与については、それが「通常必要と認められるもの」であれば贈与税は非課税とされています。だったら、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」っていらないのでは?と思われる方もいるかもしれませんよね。
でも、先に書いた非課税は、「生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与」した場合についてだけだよとされてるんです(相続税法基本通達21の3-5(生活費及び教育費の取扱い))。
つまり、いずれ使うからとして、その年中には使わずに預貯金として残ってたりしたら、贈与税が課税されちゃうことがあるってことなんです。
だから、将来の分も「一括」して贈与した分について贈与税を非課税とする規定が設けられた意味があるんですね。
前置きが長くなりましたが、この非課税制度が大人気で、信託協会によると、今年6月末現在で、教育資金贈与信託の契約件数が7万6,851件、信託財産設定額合計は5,193億円にものぼっているんだとか!(数字や金額が大きすぎてピンとこないかもしれませんが・・・)
で、平成27年度の税制改正要望では、この非課税制度のさらなる拡充が要望として挙げられています。
文部科学省と金融庁は、
1)非課税措置の恒久化
2)非課税対象範囲の拡大や口座開設手続きの簡素化
3)直系尊属(祖父母等)以外から贈与を受けた場合にも贈与税非課税の対象にする
以上の3点を要望しています。高齢者世代の保有する資産が移転を促進させて、経済を活性化させたいってことだそうで。
内閣府は、さらに一歩踏み込んで、
「子・孫の結婚・妊娠・出産・育児を支援するための贈与を目的に設定する信託に係る贈与税の非課税措置等の創設」として、結婚、妊娠、出産、育児に充てるためにした贈与についても、贈与税を非課税とすべしといっています。
確かに、これで教育費用に対する不安が和らぎ、出産率や結婚率、教育水準が上がり、日本の国力が増すのであれば、それは望まれますよね。と書くと、格差が広がる、金持ち優遇ではないかとの反対意見も出てくるんですよね。
当然、財政との兼ね合いもありますし。さて、政府はどのような判断を下すのか。答えは12月の税制改正大綱へ・・・。