Vol.20 固定資産税精算金ってどんなもの?
不動産の売買をするときに、「固定資産税精算金」といわれるものを受け払いをすることがよくあると思います。
関東では、1月1日を、関西では4月1日を、それぞれ基準日にして、その年に課税される固定資産税を、基準日から売買の日までの日数に応じて精算されるのが一般的かと思います。
たとえば、関西で10月1日に不動産を売買するとしたら、その年の固定資産税のうち、4月1日から9月30日までは売主さん負担、10月1日から翌年3月31日までが買主さん負担と考えるんですね。
そして、買主さんは、不動産のお代を支払う際に、該当期間に相当する固定資産税分を、「固定資産税精算金」として支払います。
この内容からすれば、固定資産税という税金のやり取りと思われそうですが、税法的にはそうは考えず、たとえ名目が「固定資産税精算金」であっても、それは不動産のお代の一部とされます。
なぜか・・・。
それは、固定資産税の納税義務者について規定している地方税法では、固定資産税を課税するのは1月1日で(地方税法359条)、納税する義務は、その不動産の1月1日の所有者ですよと書かれています(地方税法343条)。
つまり、その年1月1日に不動産の所有者ではない買主さんは、その不動産が所在する地方公共団体に対して、びた一文固定資産税を納付する義務はないということです。
では、どうして固定資産税を支払う義務のない買主さんが、売主さんに固定資産税の一部のように思われる「固定資産税精算金」なんてものを支払うのか。
これは、不動産業界の「慣習」なんですね。
固定資産税の納税義務なんて、ほとんど意識されていないのが一般的と思います。
すると、たとえば1月2日に不動産を売買した場合と、12月1日に不動産を売買した場合とでは、売主さん、買主さんの感覚的には、随分と違いが生じても仕方がないですね。
買主さんは、「1月2日に買えば、その年の12月31日までは、固定資産税の負担なく、不動産を所有することができて、お得だなぁ。」と感じ、逆に、売主さんは、「たった1日しか持っていないのに、その年の固定資産税は全額負担することになって、なんだか損だなぁ」と感じる訳です。
そこで、「固定資産税は、所有している期間に応じて、売主買主が平等に負担しようよ。」と考えて、「固定資産税精算金」として受け払いする技が編み出され、不動産を売買するに際しての「慣習」として定着しました。
不動産を購入した日から、次の固定資産税が課税される1月1日までの間、不動産を所有していられる「経済的価値」のお代として支払われるものが「固定資産税精算金」というわけです。
蛇足ですが、会計的な処理としては、次のように考えることになります。
・買主さんが支払った「固定資産税精算金」 ───→ 不動産の取得価額
・売主さんが貰った「固定資産税精算金」 ───→ 不動産の売却代金