Vol.51 BEPS
政府税制調査会で検討中の大きな論点の一つで、「ベップス」と読みます。
「Base Erosion and Profit Shifting」の頭文字をとって「BEPS」といいます。日本語では「税源浸食と利益移転」という意味です。
要は、国内で税金を課税できず、利益もったまま国外に逃げられている・・・という点を議論しているんです。
日本についていえば、Vol.40でも書いた、Amazonのデジタル配信について、日本の消費税が課税されないというものが、これに当たります。
さらに、Amazonでいえば、日本に物流倉庫はあっても、支店は設けていないため、Amazonの儲けに対して法人税の課税なども十分にできないのが現状です。
これは、「PEなければ課税なし」という国際的ルールがあるためなんです。
PEとは、Permanent Establishment の頭文字をとったもので、日本語に訳すと「恒久的施設」となります。
外国の法人が日本で事業を行って儲けても、日本に恒久的施設がなければ、国際的ルールに則って、日本で法人税は課税されません。
その外国法人の本国では、課税されますが、たとえば、その本国での課税も逃れるため、本社などを、税金の課税が少ない、いわゆる「タックスヘイブン」と呼ばれる国や地域に移してしまうことも可能です。
すると、実態として、日本や、その外国法人の本国で儲けているはずなのに、国際的な課税が殆どされないといったケースもあり得るというわけです。
日本から見ても、その外国法人の本国から見ても、「国内の税源が浸食され」、「利益が国外に移転している」という状況です。
これについては、PE自体の見直しを含め検討されているのですが、21日の政府税制調査会の発表では、巨額の含み益を持ったまま出国する際に、その含み益に対して課税する、「出国税」を検討するんだそうです!
税制調査会の資料によれば、
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租税条約上、株式等のキャピタルゲインについては株式等を売却した者が居住している国に課税権があるとされている。
これを利用し、巨額の含み益を有する株式を保有したまま、キャピタルゲイン非課税国(例:シンガポール、香港)に出国し、その後に売却することにより、税負担を回避することが可能。
こうした税負担の回避に対応するため、先進諸国においては、出国時に未実現のキャピタルゲイン(含み益)に対して特例的に課税する措置等を講じている
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としています。なるほど。
でも、穿った見方をすれば、これって、将来の富裕層に対する更なる課税強化に向けての第一段階なのかなとも。
国外に税源が逃げてしまうのを防ぐ→日本の課税を強化→国外に逃げようとしても、「出国税」でカバーする。
そんな青写真もあるのかなぁ・・・なんて。
ま、それはさておいて、現在、個人が株式等を売却した場合の課税は、住民税も合わせて20%で済みます(復興税除く)。8割は手元に残るんですよね。それでも課税を嫌って、住み慣れた日本を離れてシンガポールなどに行く人達って、どんな人達なんだろう・・・。
国際化の流れの中において、私がガラパゴス化しているだけなのかもしれませんが(^^;